一般社団法人日本臨床検査学教育協議会

コラム/エッセイ

医療という交響曲(1)
―オーケストラで描くチーム医療と臨床検査技師の物語-

医療の現場では、さまざまな専門職がそれぞれの強みを発揮し、力を合わせて患者さんを支えています。その姿は、それぞれ異なる楽器を奏でながら、「医療」という音楽をつくり上げる「オーケストラ」のようです。では、「臨床検査技師」という演奏者が奏でるのは、どのような楽器でしょうか?

クラシック音楽に詳しい教員が、臨床検査技師の仕事や役割を音楽になぞらえながら、「臨床検査技師の奏でる音色」を独自の視点でひも解きます。漫画とあわせてお楽しみください。《全5回》

(第1回)医療チームはオーケストラ。指揮者は患者、臨床検査技師は・・・?

病院では、多くの医療専門職が、それぞれの知識や技術を生かしながら患者さんを支えています。

医師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、薬剤師、理学療法士、作業療法士など、それぞれが異なる役割を担っています。しかし、誰か一人だけでは医療は成り立ちません。患者さんを中心に、それぞれの専門性を持ち寄り、一つの目標に向かって協力する、これが「チーム医療」です

私は、このチーム医療がオーケストラと同じように思っています。オーケストラでは、指揮者が音楽の方向性を示し、それぞれの楽器が異なる音色で一つの曲を奏でます。どれか一つの楽器だけでは、美しい音楽は生まれません。医療も同じです。患者さんは、自分がどのような人生を送りたいのか、どのような治療を望むのかという思いを医療チームへ伝えます。その思いが、医療という音楽の目標になります。だから私は、患者さんこそが指揮者だと考えています。

そして、その思いを最も近くで受け止め、医療チーム全体をまとめながら治療を進めていく主治医は、オーケストラでいえばコンサートマスターです。

主治医を支える医師たちは、オーケストラの弦楽器です。弦楽器は音楽の中心となる旋律を奏で、曲全体を支えます。同じように医師は、それぞれの専門分野で診断や治療を担当し、医療の中心的な役割を担っています。

看護師は患者さんに最も近い存在として、日々のケアや観察を行い、医療チームへ必要な情報を伝えます。その姿は、音楽に温かさや彩りを与える木管・金管楽器によく似ています。

診療放射線技師は、CTやMRIなどの画像検査によって、患者さんの体の中を一瞬で「見える化」します。大きな存在感を持ち、一打で演奏全体の雰囲気を変える打楽器の花形のティンパニのような役割です。
薬剤師は、薬の効果や安全性を考えながら治療を支えます。音楽全体を美しく包み込むハープのような存在です。

では、臨床検査技師は何でしょうか?

私は、臨床検査技師はティンパニ以外の打楽器奏者だと考えています。

打楽器というと太鼓を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、オーケストラの打楽器には、ティンパニだけでなく、スネアドラム、バスドラム、シンバル、木琴、鉄琴、トライアングルなど実に多くの種類があります。一つ一つの音は決して大きくありません。しかし、それぞれが異なる音色でリズムを刻み、演奏全体を支え、時には演奏の流れそのものを変える重要な役割を担っています。

臨床検査技師も同じです。血液検査、生化学検査、免疫検査、微生物検査、生理機能検査、遺伝子検査などなど。一つ一つの検査は異なる情報を生み出します。それらが集まり、一人の患者さんの状態を描き出し、医療チーム全体の判断を支えているのです。だから、私は、臨床検査技師はティンパニ以外の打楽器奏者だと思っています。

図の作成:ChatGPT(筆者が入力した文章をもとに生成) ※クリックで拡大

筆者:岡本 成史(おかもと しげふみ)

大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 生体病態情報科学講座 教授