一般社団法人日本臨床検査学教育協議会

コラム/エッセイ

【対談】サッカー日本代表のチーム作りから学ぶ、
これからの臨床検査技師教育(4)

昭和医療技術専門学校の学校長として臨床検査技師の育成に携わる山藤賢先生は、現役の医師であり、サッカー日本代表チームドクター、複数の医療法人の経営者という顔も持ちます。

その山藤先生と、サッカー日本代表・森保一監督による共著『日本のために!』がこの度出版されました。立場は違えど同じ未来を見つめる二人の熱い対話から、これからの臨床検査技師教育のヒントを探ります。「最上位の目標」を共有するチーム作り、個を認める心理的安全性、国試合格のその先にある「学習者の幸せ」に迫ります。《全4回》

関連リンク: 日本のために!世界一に挑戦する日本人の「誇り」と「あり方」

(この対談は2026年6月5日に収録されました。)

(第4回)資格の先にあるもの
──教育の目的は学習者の幸せ

關谷

違いを認め合いながら、ともに最上位の目標に向かっていく。そのためには、「安心してぶつかれる」ことが必要ですね。

山藤

そうですね。僕は、安心してぶつかれるコミュニティを場として作るのが、学校の一番の本来の目的だと思っています。
喧嘩しても、意見が違って揉めても、自分の言葉で発言していい。
大切なのは、社会に出て生きていく力をつけることなんです。

昭和医療技術専門学校での「倫理」の授業の一コマ。安心して「自分らしさ」を出せる場を大切にしている。「山藤さんの学校には何かすごく良い“気”が流れている」と森保一監督は言う。(撮影者:山藤)

關谷

社会に出て生きていく力、ですか。

山藤

そうです。
実は、卒後1、2年目の若い技師の早期離職について臨床現場の管理職の方から相談を受けることがあるんです。
国家試験に合格することと、社会の中で生きていく力を身につけることは、必ずしも同じじゃないんですよね。

關谷

……そのお話を聞いて、はっとしました。日々の中で、いつの間にか「国家試験合格」が最終目標のような気になってしまっていました。
でも、資格取得だけを目標にしていると、社会の中で生きていく力は育たないんですね。

山藤

そうですね。
共通の目標として、「国家試験合格」はもちろん大事なんです。でも最終目標じゃない。

關谷

なるほど。
「学校」という、安心してぶつかれる共同体の中で、自分を大事にして、仲間や社会とつながることを学び、社会に出ていく準備を整える。
国家試験合格も、その中にある共通の目標の一
つなんですね。
それって、森保監督の「ワールドカップ優勝」と同じ構造ですね。
目標は大事だけれど、その先にあるもののためにある。

山藤

そうなんです。
優勝も、国家試験合格も、ゴールそのものじゃない。
その先に、人の喜びや幸せがある
んです。

山藤

ここまでいろいろ話してきましたけど、關谷先生は、ご自身の学校をどんな学校にしたいと思っているんですか?
学校全体じゃなくていい。「私は」でいいんです。
「私は、入ってきた学生をこう育てたい」
そういうものが見えてきたなら、それが先ほどの問いの答えなんじゃないですか。

關谷

問い……「私は臨床検査技師を育成する教師として何ができるのだろう」と考えていました。
教育の目的は、「学習者の幸せ」なんです。
卒業した学生が、臨床検査という専門性を発揮して世の中の役に立って、「ありがとう」と言われて、自分も嬉しいと思える。
それが、臨床検査技師としての幸せなんだと思います。
だから、学生がそれを実現できるよう支えることが、私がしたいことなんだと思います。

關谷が勤務する北陸大学医療技術学科の卒業式。毎年後輩たちが会場の飾りつけをする。

山藤

いいですね。

關谷

もともと、私はそう思って教員になったはずでした。先生とお話して、そのことを思い出しました。

山藤

時々でいいんです。
少し立ち止まって、ゆっくり静かに、自分の感性と向き合ってみるといいですよ。

關谷

はい。この問いを、これからも大切に考え続けたいと思います。
山藤先生、ありがとうございました。

筆者:

山藤 賢(さんどう まさる)
(昭和医療技術専門学校 学校長/医師/サッカー日本代表チームドクター/日本臨床検査学教育協議会副理事長)

關谷 暁子(せきや あきこ)
(北陸大学医療保健学部准教授/日本臨床検査学教育協議会副理事長)