一般社団法人日本臨床検査学教育協議会

コラム/エッセイ

【対談】サッカー日本代表のチーム作りから学ぶ、
これからの臨床検査技師教育(3)

昭和医療技術専門学校の学校長として臨床検査技師の育成に携わる山藤賢先生は、現役の医師であり、サッカー日本代表チームドクター複数の医療法人の経営者という顔も持ちます。

その山藤先生と、サッカー日本代表・森保一監督による共著『日本のために!』がこの度出版されました。立場は違えど同じ未来を見つめる二人の熱い対話から、これからの臨床検査技師教育のヒントを探ります。「最上位の目標」を共有するチーム作り、個を認める心理的安全性、国試合格のその先にある「学習者の幸せ」に迫ります。《全4回》

関連リンク: 日本のために!世界一に挑戦する日本人の「誇り」と「あり方」

(この対談は2026年6月5日に収録されました。)

(第3回)まず“私”がある
──個を大切にするチームづくりと教育

山藤

「じゃあ僕らは、どういう個であるのか」っていうのが、すごく大事なんです。

關谷

前回の最後でおっしゃっていた、「全員が同じ目標を持つことは大事だけど、みんなが同じ人間になる必要はない」というお話ですね。

山藤

そうです。
むしろ、まず“私”があるんです。

關谷

まず、自分がある。

山藤

そう。自分がどういう人間なのか、自分は何を大事にしているのか。それをちゃんと認識することが出発点なんです。

關谷

目標を共有する前に、まず自分自身を知る必要があるんですね。

山藤

そうです。そして次に、他者がいる。
僕は、「自分と繋がる」→「他者と繋がる」→「社会と繋がる」っていう順番が大事だと思っているんです。
自分と相手は違う。考え方も違う。大事にしていることも違う。
でも、それでいいんです。

關谷

違いをなくすのではなく。

山藤

認めるんです。
私は私を尊重している。あなたはあなたを尊重している。違うよね、と。
でも、それでも一緒に生きるよね、と。
そういうコミュニティができれば、争いは起きにくい。
僕は極端に言えば、世界平和ってそういうことだと思っています。

關谷

世界平和、ですか…。

山藤

遠い話に聞こえますか(笑)。でも案外そうじゃないんですよ。

關谷

と言いますと?

山藤

使った椅子を机の下に戻すとか、スリッパを並べるとか。次に使う人を思う行動ってあるでしょう。

關谷

一見すると、小さなことですね。

山藤

小さいですよ。でも全部、「次に使う人」のためなんです。
森保さんも、挨拶をするとか、時間を守るとか、そういうことをすごく大事にしているでしょう。

關谷

はい。

昭和医療技術専門学校の廊下に掲示された「学生の本分」。日常の小さな行動の中に「他者への敬意」が表れる。

山藤

臨床検査技師なら、もっと分かりやすい例があります。心電図を取った後、きちんと片付けるでしょう。

關谷

はい。

山藤

あれは、次に検査する技師が、スムーズに仕事を始められるようにするためです。
それは、患者さんのためでもある。

關谷

なるほど……。

山藤

準備って、検査の前だけじゃないんです。終わった後に、次の人のために整えておくことも準備なんです。

關谷

挨拶も、時間を守ることも、椅子を戻すことも、心電図の後片付けも、全部つながっているんですね。

山藤

そうです。相手を尊重するって、案外そういう小さな行動の積み重ねなんですよ。

關谷

今日のお話を聞いていて、少し分かった気がします。
チームづくりって、みんなを同じにすることじゃないんですね。
違いを認め合いながら、それでも最上位の目標を共有しているから、一緒に進んでいける。
そういうことなんですね。

山藤

僕はそう思います。

アメリカ・ダラススタジアムにて。試合直後の観戦席の様子。この後、誰からともなく「ゴミ拾い」が始まる。(撮影者:山藤)
試合の後、スタジアムの清掃をする日本サポーター。「それは単なる清掃ではなく、自分たちがいた場所に敬意を払うという文化」(「日本のために!」より引用)

(第4回へ続く)

筆者:

山藤 賢(さんどう まさる)
(昭和医療技術専門学校 学校長/医師/サッカー日本代表チームドクター/日本臨床検査学教育協議会副理事長)

關谷 暁子(せきや あきこ)
(北陸大学医療保健学部准教授/日本臨床検査学教育協議会副理事長)