一般社団法人日本臨床検査学教育協議会

コラム/エッセイ

医療という交響曲(2)
―オーケストラで描くチーム医療と臨床検査技師の物語-

医療の現場では、さまざまな専門職がそれぞれの強みを発揮し、力を合わせて患者さんを支えています。その姿は、それぞれ異なる楽器を奏でながら、「医療」という音楽をつくり上げる「オーケストラ」のようです。では、「臨床検査技師」という演奏者が奏でるのは、どのような楽器でしょうか?

クラシック音楽に詳しい教員が、臨床検査技師の仕事や役割を音楽になぞらえながら、「臨床検査技師の奏でる音色」を独自の視点でひも解きます。漫画とあわせてお楽しみください。《全5回》

(第2回)同じ打楽器でも役割が違う臨床検査技師と診療放射線技師

前回、私はチーム医療をオーケストラにたとえ、診療放射線技師をティンパニ奏者、臨床検査技師をそれ以外の打楽器奏者として紹介しました。
「どちらも打楽器なのに、なぜ役割が違うのですか?」
そう思った人もいるかもしれません。

診療放射線技師が行うCTやMRIなどの画像検査は、一度の検査で患者さんの体の状態を大きく映し出し、診断や治療方針を左右する重要な情報を与えます。
ティンパニもオーケストラの中で最も大きな打楽器の一つです。一打で演奏全体の雰囲気を変え、曲の流れを大きく動かします。どちらも「一度の仕事で全体に大きな影響を与える」という共通点があります。

一方、臨床検査技師が担当する検査は実にさまざまです。血液検査、生化学検査、免疫検査、微生物検査、生理機能検査、遺伝子検査、輸血検査、尿検査など、多くの検査を組み合わせることで患者さんの状態を読み取っています
これは、ティンパニ以外の打楽器奏者によく似ています。オーケストラでは、スネアドラム、バスドラム、シンバル、木琴、鉄琴、トライアングル、ピアノ、チェレスタなど、たくさんの打楽器を一人または数人で演奏し、それぞれ違う音色で演奏全体を支えています

私のイメージでは、
スネアドラム血液学的検査(毎日の変化をリズムよく伝える)
バスドラム生化学検査(体の大きな変化を力強く知らせる)
木琴鉄琴電解質ホルモン検査(小さな変化を繊細に伝える)
シンバル銅鑼微生物検査病理検査(診断の決め手となる情報を伝える)
ピアノチェレスタ生理学的検査遺伝子検査(複雑で多面的な情報を表現する)
トライアングル凝固検査(小さな異常を鋭く知らせる)
木魚ウッドブロック拍子木カスタネット尿検査便検査輸血検査(土台となるリズムを支える)
そんな役割に重なって見えます。

もちろん、これは私自身のイメージです。しかし、多くの種類の検査を状況に応じて使い分け、患者さんの状態を多面的に読み取る臨床検査技師の仕事は、多彩な打楽器を演奏する打楽器奏者と驚くほどよく似ていると思うのです。

そして、ここが最も大切なところです。
診療放射線技師は、一度の検査で患者さんの状態を大きく「見える化」します。一方、臨床検査技師は、多くの検査結果を積み重ねることで、患者さんの病状の変化や治療効果を時間の流れの中で読み取ります。つまり、診療放射線技師が「今」を大きく映し出す専門家なら、臨床検査技師は「時間の流れ」を読み取る専門家とも言えるのです。

私は、この「時間の流れを刻み、未来を予測し、医療の方向性を支える」という役割こそが、臨床検査技師という仕事の大きな魅力だと思っています。

臨床検査技師は、検査をする人ではありません。患者さんの病気の『時間の流れ』を読み取り、その変化を医療チームへ伝え、未来の医療を支える専門職なのです。

図の作成:ChatGPT(筆者が入力した文章をもとに生成) ※クリックで拡大

筆者:岡本 成史(おかもと しげふみ)

大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 生体病態情報科学講座 教授