一般社団法人日本臨床検査学教育協議会

コラム/エッセイ

医療という交響曲(5)
―オーケストラで描くチーム医療と臨床検査技師の物語-

医療の現場では、さまざまな専門職がそれぞれの強みを発揮し、力を合わせて患者さんを支えています。その姿は、それぞれ異なる楽器を奏でながら、「医療」という音楽をつくり上げる「オーケストラ」のようです。では、「臨床検査技師」という演奏者が奏でるのは、どのような楽器でしょうか?

クラシック音楽に詳しい教員が、臨床検査技師の仕事や役割を音楽になぞらえながら、「臨床検査技師の奏でる音色」を独自の視点でひも解きます。漫画とあわせてお楽しみください。《全5回》

(第5回)未来の医療は、まだ演奏の途中~リズムを読み、未来をつくる~

これまで私は、チーム医療をオーケストラにたとえながら、臨床検査技師の役割についてお話ししてきました。

医療という交響曲は、一人では演奏できません。

患者さんという一つの命を中心に、医師、看護師、診療放射線技師、薬剤師、臨床検査技師、そして多くの医療従事者が、それぞれの専門性という音色を持ち寄り、一つのハーモニーを奏でています。

その中で臨床検査技師は、検査データを通して患者さんの状態を読み取り、診断や治療を支える情報を届ける「医療データのプロフェッショナル」です。

そして、医療は今、大きく変わろうとしています。AIやDXの発展によって、医療にはこれまで以上に多くのデータが集まり、それらを活用した新しい医療が始まろうとしています。しかし、どれほどAIが進歩しても、患者さんの命を支えるのは「信頼できるデータ」です。そして、そのデータを生み出し、その意味を読み取り、医療チームへ正しく伝える役割は、これからも臨床検査技師にしか担えない大切な仕事です。

私は、未来の臨床検査技師は、「検査をする人」ではなく、「医療データを通して未来の医療を創る人」へと進化していくと考えています。だからこそ、臨床検査技師はAIに仕事を奪われる職業ではありません。AIを活用しながら、よりよい医療を実現するための中心的な専門職になっていくのです。

医療という交響曲は、今日も世界のどこかで演奏されています。そして、その演奏に終わりはありません。新しい技術が生まれ、新しい検査が開発され、新しい治療法が登場しても、患者さんの思いに寄り添い、命を支えたいという願いは変わることはありません。だから私は、“未来の医療は、まだ演奏の途中”なのだと思っています。

もし、この連載を読んでくださった高校生のみなさんの中に、「こんな医療の世界で働いてみたい」「人の命を支える演奏に加わってみたい」そう思ってくださる方が一人でもいてくれたら、これほど嬉しいことはありません。皆さんも、未来の医療という交響曲を一緒に奏でてみませんか。

図の作成:ChatGPT(筆者が入力した文章をもとに生成) ※クリックで拡大

筆者:岡本 成史(おかもと しげふみ)

大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 生体病態情報科学講座 教授