一般社団法人日本臨床検査学教育協議会

コラム/エッセイ

検査を支える“もう一つの現場”(2)
― 臨床検査センターの世界

病院の外にも、医療を支える大切な現場があることを知っていますか?本シリーズでは、国内最大級の臨床検査センターを訪れ、その仕組みや働く人々の姿を通して、臨床検査技師の仕事の魅力と社会的役割を紹介します。

(第2回)染色体検査―AIと人の共同作業

清潔感あふれるラボ棟エントランス(写真提供:株式会社エスアールエル)

染色体検査エリア

ラボ棟の3階は、染色体検査遺伝子検査病理学的検査細胞診データ管理のエリアに分かれていました。

染色体検査エリアでは、主に造血器疾患(白血病など)の診断や、先天性異常、出生前診断を目的とした検査が行われています。造血器疾患や先天性異常の検査では、血液や尿のように何度も検体を採取することができず、検体量も限られています。そのため、標本作製は一度きりのチャンスであり、非常に繊細な作業が求められます。安定した標本を作製するために、同社ではさまざまな条件を検討し、専用の装置を開発したそうです。

造血器疾患(血液・骨髄液・リンパ節など)と、先天性疾患(羊水・絨毛・臍帯血など)それぞれに最適なプロトコールが組まれていると聞き、その技術の高さに驚きました。

装置が夜通し稼働して染色体画像のスキャンを行い、得られた染色体を分析するのは人の役割です。ばらばらに散らばった染色体の画像を、1~22番までの常染色体と、XXまたはXYの性染色体の順番に並べていきます。かつては、染色体写真を撮影しハサミで切って並べるという気の遠くなるような作業だったそうですが、現在は人工知能(AI)が染色体分離・並び替えの一部を担うことで、受付から報告までの日数は大きく短縮されました。

それでも、AIだけで完全に分類することはできず、最終的な判断には人の目が欠かせません。分析室には何十台ものPCが並び、スタッフの方々が染色体画像を手早く分類していました。熟練した分析者は、すべての染色体の縞模様のパターンを記憶しており、頭の中のイメージと照らし合わせながら分類できるそうです。そのレベルに達するには、3~5年かかるといいます。1検体につき20細胞、1細胞あたり46本の染色体。そのすべてについて、どこに異常があるか分からない状態から分類していく作業は、想像するだけでも大変です。
造血器疾患や先天性疾患の診断に直結する検査だからこそ、少しでも早く、そして正確に結果を届けることを心がけているとのことでした。

筆者:關谷 暁子(せきや あきこ)

北陸大学医療保健学部